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2025.09.29

四季の山紀行(飛計路のブログ)

■ 但馬・蘇武岳・大杉山・・・・2025年09月27日

万場スキー場に車を置くと、蘇武岳へのルートは2つある。スキー場を詰め谷の両サイドを行くコースと、名色地区から林道を行くコース。起点の名をとり名色コースと漢字では書く。歩く積りはないものの、「ないろ」は響きが良くてお気に入りであった。ところが「なしき」と呼ぶのが正式らしい事を知ってしまった。知らない方が良い事もある。

 

車を止めると同時に男性が先行された。他にも数名がお山にあるらしい。ゲレンデ脇の栃の木に実が無い。この木の花は見た記憶があって実を着けるものだと思っていた。振り返ると関西で唯一、噴火口の残る神鍋山。芝生の中に転がる軽石は往時のものに違い無い。白花のゲンノショウコは濡れている。曇天の空に陽射しはなく、雨がなければ快適な気温だ。

 

踏み跡は確り残るもののやや荒れた様子の谷底の途。下山の若者に声をかけると未だ暗い5時から始めたと云う。温泉で過ごす時間に余裕がある。大杉山へのルートを分け、巨樹の谷を這い登る。想定外の厳しい斜面で忽ち汗。名前の通り、太めのサワグルミとカツラ、上部の栃の木は大きい。ここでも下山の男性と遭遇、お山はキノコが豊作だと仰有る。キノコの詰まったザックを背負い(恐らく)、意気揚々と降って行かれた。斜面に顔を出すキノコはスッポン茸だったかな。

 

谷を詰めた後はトラバース、ゆっくり谷を見下ろし汗を拭く。滝の巻道を終え、谷芯に戻った辺りは秋の実りと動物の気配が漂う。皮を残したクリの実・栃の実は彼らの食事あと、そばには手つかずの実が沢山残る。少し高い木の上には、かなり大きな実を着けた山ブドウが食べ頃に熟れる。風が抜けると音を立てて落ちてきて、足の置き場に困る程。綺麗な青い実のサワフタギは希少になった。

 

キノコは確かに種類は多い。カエンタケは、弱ったミズナラの根本で確認した。彼はこの様にして種々のキノコを見つけたのだ。収穫にはやや遅いナメコを大量に着けたミズナラは、尾根上の、名色コースの脇にあった。暫くそんな林床が続き、ブナの純林に代わる頃に蘇武岳のピークが覗く。ピークまで残り僅かな辺りで蘇武岳・大杉山の分岐点、今日もやはりピークはパス、残る一つ山〜四つ山、最後に大杉山で充分堪能できるコースである。

 

先ずは一つ山、ピークのブナは切払われて、陽射しも少々、明るくて気持が良い広場。木陰の倒木に腰掛けエネルギー補給、風が抜けると濡れた身体は寒い。陽射しの中は温かくて、猛暑が去って未だ1・2週間、今では遠い記憶の彼方だ。心細い事この上ない。さて、補給の後は残した行程をこなして大杉山。にこやかな単独女性は元気がある。見下ろす景色に秋色は無い。ナナカマドには気配だけ。

 

降りの大杉山コースもかなり厳しい。辺りはずっと、ブナの純林が続いている。ここでふと気が着いた。お山が豊作と云うならブナの実に埋まる林床がある筈なのだ。ブナの実は、粃を含めて見ていない。里山ばかりは豊作でも、高所の山は東と同じく不作だろうか。そうした懸念はあるものの、今日は久しぶりによく歩き、お山は長い夏の猛暑にも負けずまずは豊作の様子で、まあ満足であった、としても良かろう。