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2025.06.09

四季の山紀行(飛計路のブログ)

■ 中央アルプス・将棊頭山・・・・2025年06月07日

桂木場駐車場には8時半、ぎっしり詰まった傾斜地に空きは無い。梅雨入り前の駆け込みは、世相を反映して慌ただしい。少し降った、信州大学の山小屋の先なら横向き駐車が可能。有り難く止めたところへ後続車があり直ぐに降って行く。こんな時間に珍しい、と思いながら、歩き出したところへ現れた若者1人、先の車の主に違いなく、トレラン姿がよく似合う。後に続いて、クラシックルートに入ると前方に人影は無い。今回もやはり、しんがりを引き受ける事に確定した。

 

人の無い、カラ松の林の薄暗いルートも、見るべきものさえあれば楽しくもある。ウド(独楽)の姿はところどころ、ウドのどこらあたりに孤独を楽しむ様子があるのか不思議、他に菫がポツポツ、寂しい林床だ。ハルゼミの合唱はあれども身体は重い。上手く出来たコースは降りでは長くて憂鬱だが、登りはやはり歩き易い。黙々と歩けば汗になる。重い身体もやや楽になり、第2の水場辺りは林床も明るい。

 

未だ早かろうと思ったベニバナイチヤクソウ、固い蕾の中にも開花が2つ、ピンクの花が有難い。柔らかいカラ松の葉叢の先に、残雪で一際明るい、森林限界を超えた尾根が覗く。この先は霧の多い地形らしく、カラ松の枝に布状の苔が見られる。その名はサルオガセ、夕闇迫る頃には幽鬼にも姿を変える森の精霊だ。薄暗い頃に、異様な気配で振り返ると、幽鬼となったこの苔に襲われると云う伝承がある、かも知れない。

 

2000の尾根に乗るところに山の神の祠がある。何やら気になって、今回は始めて挨拶をした。しかし、後顧の憂いは山の神にも如何ともし難く、ザックを下ろしてエネルギーを補給しよう。概ね800を登って、朝食のきしめんとご飯半分を消費した。この先に向けたエネルギーは、、、心細い。ま、歩けばいつかは着くだろう。権兵衛峠への途は藪に飲まれて廃道だ。白川方面は降った先の林道が長い。尾根に出るとダケカンバと大シラビソの林床を行く。時に御岳辺りがチラチラする。山裾まで出した御岳は態度がデカい。腰から下は隠すのがエチケット。小さなイワカガミの教育には良く無いのだ。

 

鳥はけっこう賑やかに鳴く。林床には愈々花は無い。ルーペで見るとやっと見えるサイズの花ばかり。大樽小屋で、今日は重いザックを下ろして小休止。一服などしながら小屋の観察、泊まりたいとは思わない。さて次は難関、胸着八丁、途中には、美しいタカネザクラが待っている、かな。雪の出てきた岩尾根を登り、辿り着いたタカネザクラ御殿の前、案内を頼むと未だお休みの由、蜃気楼の如き八丁の頭を目指してよろめきながらの登り。待っていたのは、まことに小さなヒメイチゲと、ややフライング気味のタカネザクラだ。

 

残雪の上を歩き岩尾根を登り、将棋頭から谷を隔てた駒ケ岳・改めて御岳山にご挨拶、雷鳥の姿は無い。雷鳥の所在をお聞きしたところ、昼からは駒ケ岳の方に見かけたらしい。コガラから茶臼山を周回する方であった。南には甲斐駒ヶ岳も覗いている。ここで、おもむろに酒・タバコを取り出し、東の方に献盃の儀、永劫回帰は否定される筈は無い。あまり飲んでは帰りの途が覚束ない。先の男性の後姿を、茶臼山の岩塔に消えるまで見送って、お山を降る。明日の雨の予報は、どうやら当らなくて済むらしい。降りもやはり、しんがりである。