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2025.06.02

四季の山紀行(飛計路のブログ)

■ 京丹波・長老ケ岳・・・・2025年05月31日

西に行けば雨に強風、加えて寒気が着いてくる。先週撤退した比良で東の風では湖西線は運休ではないか。南は雨に決まっている。残るところは北しかない。北のお山の天候を占ったところ、長老ヶ岳に傘マークは無い。ナツツバキにはやや早いものの、近くのお山は熊も出たようで、贅沢を云う余地が無い。

 

黒雲の下、仏主の駐車地は当然無人、嵐の前の静けさの中、谷の瀬音にカジカガエルの声が混じる。俄に感じる水の匂いは夏のものだ。滑り出しは大変良い。橋を渡り、繁茂する山裾辺りの草むらに、山椒に加えて黄色いモミジイチゴと赤いクサイチゴを発見した。近頃はイチゴの類は芽吹いたところを鹿に食べられ、人様の目に触れる機会は滅多に無い。当然ながら、大きくて綺麗なものは有難く頂く事に決まっている。

 

キャンプ場跡地までの杉の林は関門と心得ている。高度差・距離ともに貴重な区間だ。関門ではあるが、高度を稼ぐとヤマボウシやミズキ・カマツカなど、木本の花の咲く辺りは眺望も良い。花の間に覗く集落は絵になる地点で「展望所」の立札があった。その板も今は無い。大きな葉を付けたハクウンボクは久しぶりにお目にかかる。

 

生長する樹木に年々埋もれる管理棟の前で汗を拭き、暗いながらも京丹波の山々を眺めて、更に暗さを増した尾根へと続く藪のトンネルへ突入、熊さんに、この笛の音は届くだろうか。時に吹く風に癒やされながら歩いた尾根上は、狂乱の世界であった。予報で風速20m、気温7℃とあった通り、手持ちの温度計では6℃である。ボチボチ歩いていては低体温症で死んでしまう。ピーク下までほぼ駆け足、ガスに混じる雨が冷たい。ぼんやり見えた黒い影は熊にあらず、逞しい男性ハイカーであった。

 

ピーク下から周回コースで降るべく林道を歩く。お山の影で風ほどは幾らか落ち着いて、雲間から日射しも覗く回復傾向、しかし気温は未だ低い。聞き覚えの声はアオゲラの雛だ。やがて気付いた親鳥が盛んに泥棒、泥棒と騒ぐ。雛は愈々ジュージュー鳴く。あ〜早よ行こう。降る道の前には柔らかくて繊細な、できたばかりの樹冠が綺麗だ。大きな葉の上に咲くホウの花、進化の過程で取り残された様なところが可愛らしい。はるばる飛来したオオルリに陰りはなく、ジュウイチには爆発する勢いがない。

 

エネルギー枯渇が著しく、トチの落花に埋まるキャンプ場跡で補給タイム。時計をみると13時前、こんなに早い周回は新記録だ。これが何かの力になれば有難い。そんな光景を終始目にした巨大カツラは知らん顔、本来は終りに近いタニウツギは小さな蕾を残して花束に、手を浸けた谷水は温水を流して労をねぎらった、と言う事にしよう。